難航する「新規なアミノ酸合成法の開発」
新規なアミノ酸構築法を開発したい。
これは、アミノ酸からなるペプチドを主要製品として扱うHAMARIにとって、長年にわたる重要なテーマです。この研究は、2003年から2004年にかけてBelokon錯体を用いて検討されましたが、その物性・選択性および特許性に問題を抱えていたため、結局、この開発は半年ほどで中止されました。
その後の紆余曲折を経て、留学先はNew York州立大学Stony Brook校の尾島研究室(当時Soloshonok先生は客員教授として在籍)に決まり、2010年10月からHAMARIの研究員による初の米国留学が実現しました。この留学期間中、世界トップクラスの研究室での交流に刺激を受けながら、Soloshonok先生の指導の下、独自のNi(II)錯体を用いるアミノ酸合成法の基礎研究に取り組みました。
米国留学を終えた研究員の帰国後、2011年11月、現地での研究を実用へと展開させるために、非天然型アミノ酸の新規合成法の開発をテーマとする”SOLプロジェクト”が誕生しました。プロジェクト名(SOL)は、共同研究者であるSoloshonok先生の名前とスペイン語1)で太陽を意味する ”sol”に因んで命名しました。青空に輝く太陽のようにHAMARIを照らし、恵みある成果が得られるようにとの願いを込めています
若手研究員の苦闘
プロジェクトメンバーに選ばれたのは、精鋭の若手研究員2名。アミノ酸合成研究をリードしてきたSoloshonok先生から直接指導を受けたのは幸運でしたが、やり取りは当然”英語”。報告書は毎週英文で提出、毎月のオンラインミーティングでは英語でのディスカッションが義務付けられ、研究員たちは悪戦苦闘。先生からは「Hurry Up!」、「Did you check TLC ?(大事な副生物を見逃してないか?)」、「What’s conclusion?」と研究への厳格さを求められ、他方で、経営陣からは”そのPJはいつ利益を生むのか?”とのし掛かるプレッシャー。そのような状況にあっても、「How’s going, guys?」とメンバーに気さくに接し、暖かく照らし見守る、太陽のような先生の人柄に励まされ、研究員は情熱を絶やすことなく開発研究に打ち込みました。
ビジネス化と人的交流
この新たな技術(SOL技術)をどうビジネスにつなげるか?企業の研究開発では常に考えなければなりませんが、本プロジェクトではスケールアップが課題でした。プロセス改良を継続的に行い、スケールアップに伴う反応遅延や乾燥時間延長、残留溶媒の問題を解決しながら、2019年8月、ついにSOL技術によるテーラーメイドアミノ酸2)の10 kg製造を達成しました。また、少量多種のテーラーメイドアミノ酸の受託合成ビジネスにも取り組みました。
さらに、2019年7月 山形大学のご協力のもと、テーラーメイドアミノ酸に関する国際学会を開催しました。特許・論文・ビジネスなど形ある成果に加えて、国内外の研究者と交流が持てたことは、HAMARIの今後の研究開発に大きな力となるにちがいありません。